【読書メモ】「誰のためのデザイン?認知科学者のデザイン論」
iPhoneについてくるイヤホンって、音質もなかなかいいし、使ってる人多いですよね。
でも、あのイヤホンを使いこなせている人はそう多くない気がします。
iPhone純正イヤホンには、3つのボタンがついています。
音楽を流しながらそれぞれを押すと、音量の調節に2つのボタンが使われて、残りの1つは音楽を一時停止させるものであることがすぐわかりました。
便利だなあ、と思いつつ、数ヶ月使っていましたが、あるとき間違ってボタンを2回連続で押してしたことで、新しい機能があることに気づきました。
中央のボタンを2回連続で押すと、次の曲にスキップすることができるのです。
これまでこのボタンにそんな機能がついているとは思いもしなかったので、他にもできることがあるのではないか、と調べてみました。
すると、こんなにたくさんの機能があったのです。
中央ボタン1回押し:再生・一時停止
中央ボタン2回押し:次の曲にスキップ
中央ボタン3回押し:前の曲にスキップ
中央ボタン2回押し→長押し:早送り
中央ボタン3回押し→長押し:巻き戻し
+ボタン:音量を上げる
ーボタン:音量を下げる着信時にセンターを1回タップ :通話開始
通話中にセンターを1回タップ :通話終了
通話中にセンターを2秒間タップ:保留状態に
着信中にセンターを2秒間押す :着信拒否
めっちゃ便利ですけど、2回押しとか3回押しとか2秒押すとか、覚えられなくないですか?混乱しませんか?
今回読んだ「誰のためのデザイン?」には、こういうデザインは、なぜダメなのか、どうしたらよくなるのか、などといった考え方のヒントが書かれていました。
本の内容を全て網羅することは難しいので、特に大切だと感じたことをメモとして記します。
誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論
- 作者: D. A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2015/04/23
- メディア: 単行本
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学習された無力感
そもそも人はなぜ「使いにくい」モノが嫌いなのか、ということです。
人は、同じ作業で間違いを繰り返すと、「自分にこの作業をするのは無理だ」と無力感を持って諦めてしまう、ということです。
ユーザーがサービスの利用をやめてしまう理由は様々ですが、これも一因であることは間違いないと思います。
サービスを運営しながら、GAで離脱率や離脱ページを把握したり、どのようにページが回遊されているのかを見ることで、ユーザーが「学習された無力感」を感じているポイントを見つけ出せそうです。
可視性とフィードバック
ではどのようなことができているモノが「いいデザインのモノ」なのか?
と言うことに関して、筆者は「可視性とフィードバック」について述べていました。
可視性…関係する部分を、目に見えるようにすること。
自転車のハンドルは、右に回せばタイヤも右に回るので、ハンドルとタイヤがつながっていることが簡単にわかります。
フィードバック…ある行為の結果を直ちに明らかにすること。
自転車はすぐ曲がります。
この2つができているモノは、初めて使う者であってもユーザーはスムーズに利用することができますが、そうでなければ「ここを押したらどこがどうなるの?押してみたけど、何が起きたの?何も変わっていないように思えるけど…」などと不安になってしまいます。
この本では主に機械についてこのようなことが述べられていましたが、ウェブサイトやアプリでも同様のことが言えると思いました。
「このリンクをクリックしたらどこに飛ばされるの?」
「押したけど何も変わらない(ように見える)んだけど…」などなど。
特に自分がこういうことを感じるのは、ネット通販を利用する時です。
商品をカートに入れたはずなのに、何も文言が出てこない。
クリックできていなかったんだな、と思ってもう一度押してカートを見ると、同じ商品が2つ入っている…
些細なことですが、このようにフィードバックがないと、地味にイライラします。
課金が発生するページなどでは、特に慎重に練らなければならないポイントだと感じました。
サービスを作る時に意識したい4つのポイント
ユーザーが自然と使えるようにするために、以下のことを念頭におく必要があると筆者は述べていました。
対象を目に見えるようにして、実行への隔たりと評価への隔たりに橋をかける
ユーザーが「今何をすることができて、どうやったらいいのかわかる」状態を作る。
画面上にボタンや情報がありすぎると、何をしたらいいのかわからなくなります。
機能はどんどん追加したくなりますが、盛り込みすぎないよう意識しなければならないなと感じました。
対応付けを正しくする
コントロールスイッチと、それが司るシステムの位置関係を空間的に見てわかりやすいものにする。適切な場所にボタンを設置するなど。
例えばFBでは「いいね」を押すと、「いいね」そのものの色が変わるから押したことがわかるからいいのであって、たしかに、全く異なるページ(アクティビティログなど)にのみ「いいねしました」などと表示されては不便極まりないな、と思いました。
自然の制約や人工的な制約などの制約の力を活用する
レゴブロックはブロックをつなげるために凹凸が必要になっているが、それによって初めて触る人でもスムーズに使用することができる。
スマホなどのデバイスで、人は無意識に上からした、左から右に画面を見ていく、と言うことがこれに当てはまるのかな、と考えました。
エラーに備えたデザインをする
エラーはどうしても起こるもの。エラーが起こってしまった時にユーザーが正しい方向へ戻れるように援助しなければならない。
確かになぜエラーが起こったのか」「この後ユーザーはどうしたらいいのか」がわかるように書かれているエラーページはわかりやすいです。エラーページを適当に作っているメディアは少なくないように思いますが、気を配ることでユーザーの離脱を抑えられそうです。
まとめ
「どういうデザインのモノが使いやすいモノなのか」ということを、認知心理学の観点から徹底的に考えさせられた1冊でした。
冒頭に書いたiPhone付属のイヤホンは、
・対応付けがなされていない
・対象が見えない(イヤホンに「+」「-」「マイクマーク」の他に、▶︎などのアイコンが書かれていれば、まだわかりやすいのに…見た目のシンプルさを意識しすぎている?)
・フィードバックが見えにくい(次の曲を再生したいのに、誤って長押ししたことがあるが、何もフィードバックがなくて「?」となったことがある)
ために、使いづらさを感じていたのだな、と分析することができました。
学術書のような、少しとっつきにくい本であったこと、デザイナー向けの本であったことから、最初は読むことを躊躇していましたが、「いいデザイン」をより論理的に理解することができたので読んでよかったです。